『なによりもひどいことに、ここ(沼)には駅逓所がなく、村には馬が一頭もいません。翌朝農夫を5マイル離れたところへ送り、かなり長い交渉のすえようやく一頭調達できました。』とある。
沼から市野々までは十三峠の半分近くの峠を越える必要があり、途中で一泊しないと無理では、と考える方も多い。しかも、沼では5マイル(約8q)離れた所(下関?)から長い時間交渉し一頭の馬を調達してからの出発である。その後も、途中玉川では2時間交渉、小国では荷牛探しと雨宿り、黒沢でも1時間余り考え事をしたと記しており、途中で4時間程度ロスしたことになる。通常のペースでは約8時間程度の道程であるから、都合12時間程度要するはずである。
計算上、沼を朝8時に出たと仮定すれば夜8時頃には市野々に着くことになる。
市野々で早朝にでも記したものか記述の最後には『きのう旅した道のりは12時間かかって18マイル(約28.8q)!』とある。日照時間の長い季節でもあること。黒沢峠を暗がりに越えていること。12時間かかったと記していることなどを考えるとバードの記述に誤りはなく、北日本の旅の中でも十三峠、特に沼から市野々間は最も難儀した行程のひとつだったと思う。 |